30s German Kriegsmarine Drillich Cotton Twill Trouser

H I S T O R Y

1930年代後半、従来の分厚いウールやキャンバスは潮風を含むと重く乾きにくく、そこで採用されたのが、本品に見られるライトウェイトのコットン・ツイル〈ドリルリッチ〉トラウザーです。1937年制式化（通称“M37”）から開戦直前の1939年まで、わずか三年弱だけ生産された希少モデルで、無染色の生成りに近いホワイトカラーは当時のドックや造船所の甲板上で視認性と作業性を両立するための色調とされています。 しかし大戦開幕とともに綿花の輸入難に直面。国内で調達しやすい亜麻を使用したHBTリネン生地へ転換したため、コットン仕様は短命に終わりました。前線や補給路の逼迫で旧型の在庫は最後まで使い切られ、損耗部位を継ぎ接ぎしながら酷使されたのちに廃棄されたものが大半。終戦まで残った個体は新型HBTの10分の1以下と言われ、現存数は極めて限られています。 本品はその稀少な生き残り。軽量ながら緻密に織られたツイル地は潮風をはじく適度な密度を備え、裾のドローコード、サスペンダーボタンなど、前期型特有のディテールも完存。甲板兵の日常に寄り添った作業服でありながら、戦時下の資材事情と技術革新が交錯する転換期を物語る一着です。歴史的背景と希少性を併せ持つ、コレクションピースとしても価値の高い逸品をぜひご堪能ください。

D E T A I L

深めに取られたハイウエストのウエストバンドには6つのメタルボタンが付属し、ボタンフライ仕様。フロントにはウォッチポケットが付き、背面にはパッチポケットがひとつ配置されたシンプルなデザインでありながら洗練された軍用ディテール。裾にはドローコードが通され、過酷な海上作業時に水や風の侵入を防ぐ実用的なディテールがが施されています。

C O N D I T I O N

右前見頃、ボタンフライ部分と股下部分に補修後がございます。当時の白銅製メタルボタンも欠損なく、ウエスト内側のスタンプやタグの薄く印字も残り、裾、ウエスト部分のドローコードも残ったグッドコンディションです。

S I Z E

表記：―

ウエスト：80 cm（実寸）

股上：35 cm

股下：69 cm

総丈：104 cm